MOON LIGHT

頭の中は、ビックリするほど冷静だったのを覚えている。

きっと、涙も出ていない物だと思っていた。


「…大丈夫かな??」


隣の座席に座っていた女の警察官が尋ねてきた。

普通に考えて、大丈夫な訳はない…
とは、思ったけれど一応小さく頷いて見せた。


すると、隣からするっと手が伸びてきた。

その手は、そっと私の頬に触れた。


「声出して泣いていいからね…?」


言っている意味がよく分からなかった…。
だって、私は涙なんか流していないから…。


私の、怪訝そうな表情を読み取ったのか
警察官はポケットから可愛らしい手鏡を取り出した。


鏡に映った私は…
目は少し虚ろで、でも無表情にボロボロと涙を零していた。


自分で見て少し驚いた。

頭の中は整理がついてると思っていた。


でも、いざ考えようと思うと頭の中には、

“私が悪いんだ…”

という言葉だけが駆け巡っていた。



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