Romance Cutter ―初恋の傷請け負い人― 第六話・最終話
彼女にとっての最大の不幸は、笑顔を手に入れる前に、ケイを好きになってしまった事だった。
今のほのかが、ケイと唯一共有できないもの、それは、笑顔そして喜びを分かちあう事だった。
ケイが自分の為に尽くしてくれる、その気持ちに対して「ありがとう」とは言えても、いつもそこには笑顔が、無い。その為、お礼を言っても、余りにも素っ気なく見えてしまう。
補足だが、ここ最近、あの雪の様に真っ白だったほのかの肌が、次第に肌色を帯びてきだした。


-…まるでそれは、今までの人形の様なほのかの感情に、暖かな人としての血の通いが見え始めた兆候であるかの様に-


…ありがとう、と言うその気持ちを、いつしかほのかは言葉ではなく、涙を流す事によってケイに伝える様になっていた。ほのかは、ケイに感謝の気持ちを伝えたくて必死だった。
だがそれは、ケイにとって、全く違う解釈につながっていた。
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