Romance Cutter ―初恋の傷請け負い人― 第六話・最終話
季節は、粉雪舞い散る十二月中旬のこと。夕霧本家の庭にて-


-僕にもロマンス・カットって、出来るのかな?-


学校も休みがちになり、すっかり神経が衰弱しきっていたケイ。
この時、あの日の晩から、とうとう貫き通す事の出来なかった、ほのかへの想いを絶ち切るために、自分自身の初恋の傷を請け負おうと思い立った。



「ウアアァーッ!」



…ケイの左手首からほとばしる、鮮血。止めどもなく流れ出すその血は、とうとう叶える事の出来なかった、ほのかへの想いに対する悔し涙であったのか。


「ケイ、どうかしたか?
!?ケ、ケイ!どうしたんだ!」


賢が庭で起こっている異変に気付き、ケイの元に駆け寄ってきた。
意識が遠のく中、ケイは最後の力を振り絞って、華やかなデザインの和紙で覆われた小箱の中に、血塗れになったロマンス・カッターを入れた。
そして目の前にある桜の木の下にあるくぼみに隠すように、その小箱をしまうと、そのまま意識を失った。
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