Romance Cutter ―初恋の傷請け負い人― 第六話・最終話
「…ひどい。そんなの、ケイ君が、ほのかさんがかわいそう!」
そう言ったのは、ケイを追って、夕霧本家に訪れていた、あの古風な丸眼鏡におさげ姿の岡山未恋だった。
未恋は今、ケイの全てを知った。そして思った。


-今ケイ君は、生まれ持った、大きな宿命に翻弄されている。このまま、軽々しく会っちゃいけないかも。
でも…-


…未恋は、重々しいこの場の雰囲気を紛らわせようと、ふと、座敷から外の庭を眺めた。
そして、この旧家の敷地内にある、ある変わった物に気が付いた。
「…あの、洋風の小さな建物は?」
「…ああ、あれですか。あれは離れ家で、ケイが今寝床にしています。最近は、食事時や風呂以外では、ずっとこもったきりで…」


-あそこに、今ケイ君が…-


そう思ったその瞬間、未恋は、その洋風の建物が、何かどす黒い空気に包まれている様な気がして、ゾクッとした。
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