Romance Cutter ―初恋の傷請け負い人― 第六話・最終話
よく見ると、家の内部の突き当たりに、一つの階段があった。未恋はその階段付近まで行き、再び耳を澄ませた。
今度は、別の音がした。


-カチカチ…カチカチ…-


「…間違いない。空耳じゃない。この階段の上から、確かに何かの音が!」
不吉な感じを抱えたまま、未恋は少しずつ、その階段を上っていった。
…そして、目の前に現れた部屋のドア。
ほんの少し、扉が開かれている。

-カチカチ…カチカチ…-
「ここから聞こえる…」
その音は、継続して鳴り続ける。
「今度こそ、この中に、ケイ君が…」
未恋がそう呟いたその時、急にその音が止んだ。未恋ははっとした。
…恐る恐る、その少しだけ開かれたドアの間から、そっと中を覗いてみた。


中には、果たしてケイがいた。


…ケイが、散らかった部屋の真ん中に立っていて


…右手に持っている何か小型の刃物を


…自分の首に押し当て、かっ切ろうとしている!


「駄目!ケイ君!」
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