Romance Cutter ―初恋の傷請け負い人― 第六話・最終話
そう言うとほのかは、左手首辺りに手をやった。
最近、ほのかは四六時中左手首に淡いピンクのリストバンドを付けている。ケイもそれについては知ってはいたが、その下に隠された物が何かは知らなかった。そしてそれが、露わになった。


…しなやかな、長い指先で、ほのかは左手首に付けているリストバンドをするりと外した。
そして、ケイの目に飛び込んできた、ほのかの左手首に刻まれた無数の生々しい切り傷。それは、紛れもなくリストカットをした跡である。
ケイは、思わず顔をしかめた。そしてそれと同時に今すぐここから飛び出し、ほのかのその腕をつかんで叱ってやりたい気になった。
肌の色は雪のように白く、長く美しい黒髪。そして人形の様に麗しくも無表情な、正に神が作り出した作品と呼んでも良いような美少女、ほのか。そんな大切な身体にいとも簡単に傷を作っても良いものか。
ケイは初めて、ほのかに対して激しい怒りを感じた。
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