Romance Cutter ―初恋の傷請け負い人― 第六話・最終話
だがそれは、一方では、誰よりも近くにいながら、気安く触れることさえ出来ないその肌が、いくらそれがほのか自身の物だとしても、自分以外の手で傷つけられたと言う気持ち-
そんな十五歳らしからぬ、少し不埒な気持ちがブレーキとなり、飛び出せずにいた。


…ほのかは右手で、どこからともなく取り出したある物-ロマンス・カッター-を、自分の左手首目掛けて勢いよく切りつけた!




…ケイは、その後の事をよく覚えていない。辛うじて覚えているのは、うっすらと立ち込める霧の中、気を失った少女を、優しく膝枕をするほのかの姿。そしてその霧に導かれる様に、ほのかの前に躍り出ていたケイに対して言った、ほのかの言葉…


-今夜、私の部屋に来てくれる?-


…夢か現かも分からぬその言葉を信じケイは、思い切ってほのかの部屋のドアをノックした。
-ほのかの部屋に入る事が出来る-
ケイにとっては、大きな前進だった。
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