かんのれあ
「いやぁ、会場が暑苦しくて参っちゃってさ」


目の前に来た河野さんが、
「逃げてきちゃったよ」
と付け足しながら、

子供っぽい笑顔を向ける。


いつぶりだろう、

河野さんとこうして普通に言葉を交わすのは。



「で、ですよね。
あたしも暑くて暑くて――…」



視界が滲んだ。



河野さんに悟られないように俯いたけど、

震える声や、鼻をすする音でバレバレだったんだろう。


優しく申し訳なさそうに、笑う声が聞こえてきた。
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