かんのれあ
あたしはふと、あの日の本屋の帰りを思い出した。



河野さんが、頭をなでて、"頑張ろう"って言ってくれた、あの日。


そういえば、あの日の河野さんの笑顔は、どこか少し疲れていた


―――ような気がする。



「それまでさあ、何にも言ってこなかった奴がだよ?

かんのさんの成長見て、"正式な担当は俺です"ってある日突然言ってきて。

山崎がかんのさんにとった態度は知ってたから
俺も黙ってるわけにはいかないじゃない?

で、まあ一、二週間揉めまして―――」



負けました

と、相変わらず笑顔は保ったままだったけど、

悔しそうにそう呟いた。
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