かんのれあ
山崎さんは、あたしに冷たい態度を取った後も、

そのまま諦めると思い込んで、他の編集さんに担当の引継ぎをすることもなく、

書類上ではあたしの担当のままだったらしい。



そして、
そこが勝ち負けの決め手だった。



河野さんは、いくら自分が担当替えを申し出ても、

正式な担当が認めなかったらどうする事もできない、

書類上での河野さんの位置付けは、

好意で作品を批評する、いわばそこらのおじさんと変わらない、


そう言って苦笑いをした。



「最初に担当の引き継ぎを申し出るべきだったんだけど、
すっかりその事を――」


忘れてたらしい。


「申し訳ありませんでした。

担当に内緒で勝手に連絡して、その上何て謝ればいいか…

なかなか踏ん切りもつかなくて」

そう言って、頭を下げた。

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