かんのれあ
「確か…前にも一度、編集部で会ったわよね」


鏡華さんは相変わらず、鏡越しに話を続ける。



「はいっ。
かんのれあです」


「ああ、あなたが」

そう言って、また瞳と口元を緩める。


「れあちゃんも、息苦しくなって逃げてきちゃった?」


鏡華さんみたいな人に
突然ちゃん付けされて、思わず頬が赤くなる。


「あ、いえ、
もうみんな帰るみたいなので、その前にトイレにと思って…。

でもあの空間、ちょっと緊張しますよね」


「ねー」


「…」


「……」


「……。」



そうしてしばらく、沈黙が続く。


鏡華さんは、化粧を直すわけでもなく、鏡の前に立ったままだ。



そういえば、鏡華さんは時間を潰しにここへ来たんだろうか。



―――ピルルルル!



そこで、鏡華さんの携帯が鳴った。
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