かんのれあ
そして迎えに来ていたタクシーの所へと向かうと、

山崎さんは歩いて帰ると言って、それに乗ろうとしなかった。


タクシーが出発する前に、あたしは窓を開けて山崎さんに挨拶をする。


「一段落したら、また連絡します。
今日は本当にすみません。
でも、山崎さんが担当で、よかったです」


調子いいかもしれないけど、率直にそう思った。


山崎さんは黙っていたけど、

あたしが窓を閉めようとして、口を開いた。




「…秋本さん覚えてる?」



突然何の話をするつもりなのか読めなかったけど

いつの間にか少し柔らかみを帯びているその声に、とりあえず頷く。


あたしの初代の担当さんだ。



「あの人の担当替えの時

かんのさんの次の担当は誰にするーっていうんで
、会議で参考資料にデビュー作読んだのね。


…リアルなんだよね、かんのさんの作品は。
キャラっていうか、女の子の感情表現が」
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