かんのれあ
今ならまだ、引き返せる。

他の題材にすればいいだけ。



家に帰ると、

あたしは自分の気持ちを確かめるように、あの日のポップを出してみた。



すると、
あたしの頭を撫でてくれた、そして涙を拭ってくれたあの手、

そのぬくもり、悲しそうな笑顔、

他にもたくさん、たくさん、

あたしの中を過ぎってく。



思わず胸から溢れそうになるものを、

甘く、静かに噛み殺す。



けれど噛めば噛むほど甘さは増し、

溢れるものを止められなくて、どうしようもなくて、

ほろ苦さをも感じてくる。





――――この気持ちを綴らなかったら、

あたしは絶対後悔する。



河野さんがくれた全てを、

あたしはこの手で綴りたい。



河野さんが遠くへ行ってしまうその前に、

この気持ちを伝えたい!
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