かんのれあ
あたしはしばらくその音を聴く。
ただの紙を擦る音なのに、
ずっとこの空間にいたい、あたしにそう思わせる。
けれど
このままこの音を聴いていたら、
あたしの心はきっとまた、後ろに向かって歩きだしてしまう。
そう思い、一歩前に、踏み出した。
「河野さん」
河野さんは少し間を置いてから、
手を止めあたしの方を見る。
よほど派手な整理をしていたのか、
長袖のシャツは肘より上まで捲り上げられ、
額にはほんのり汗をかいている。
そうして目をぎゅっと瞬きをさせてから、腕で額の汗を拭うと、
ようやくあたしの呼びかけに返事をした。
ただの紙を擦る音なのに、
ずっとこの空間にいたい、あたしにそう思わせる。
けれど
このままこの音を聴いていたら、
あたしの心はきっとまた、後ろに向かって歩きだしてしまう。
そう思い、一歩前に、踏み出した。
「河野さん」
河野さんは少し間を置いてから、
手を止めあたしの方を見る。
よほど派手な整理をしていたのか、
長袖のシャツは肘より上まで捲り上げられ、
額にはほんのり汗をかいている。
そうして目をぎゅっと瞬きをさせてから、腕で額の汗を拭うと、
ようやくあたしの呼びかけに返事をした。