かんのれあ
そこで、河野さんは「そうだ」と思い付いたように、

散らかる机の上にぽっかりと空けたスペースに置いてある、大きな封筒を手にとった。



「読ませてもらいました」


そうして微笑みを向ける河野さんから、あたしは封筒を受け取る。


今回書いたこの話をどうしても河野さんに一番に見てほしくて、

原稿を完成させるとすぐに、あたしは山崎さんに内緒で河野さんにお願いしたのだった。



「山崎から聞いたよ。
一人で書いたんでしょ、これ?」


「いえ、原稿にストーリーとして書き起こすのは一人でしたけど、

河野さんがいなかったら、書けなかった話でした」


「…………。

全体的な水準としては……、やっぱり、鏡華さんのが上かな。

でも気持ちがすごくリアルだし、何より、動きがちゃんと出てる。

勝負なんて言い出した時にはハラハラしたけど……かなり成長したと思う。

これなら、ひょっとすると読者が半々になるかもしれない」


河野さんはいつの間にか、片付けを再開させている。
< 177 / 200 >

この作品をシェア

pagetop