かんのれあ
「……俺もかんのさんの作品、好きですよ。

一緒に仕事をした仲間としてとか、そういうのは抜きにして、
一人の読者として」



河野さんの出来る限りの優しさを込めてくれた、返事だった。



相変わらず表情は伺えないけど、


声の、言葉の、


節々からそれを感じて、

色々な感情が一斉にこみ上げてきて、

言葉を紡げなくなって、あたしはただ頷くしかできない。




バレないようにしてたのに。




河野さんが向こうを向いてる間に、

バレないで、終わろうとしていたのに。



あたしが何を思って、

どんな表情をしていたか、


河野さんはそれを察していて、振り向いた。


あたしが初めて自分の気持ちに気がついたあの時の、

悲しそうな、心配そうな、笑顔をして。
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