かんのれあ
「何でこっち見ちゃうんですか……」


あたしは震える声で、強気を装う。


河野さんは

「ん?」
と、あたしの言葉に返事にならない返事をしながら、

眉を下げ、優しさと、ほんの少しの冷たさを含んだ瞳を向ける。



気持ちに応えることができないゆえの、

ぬくもりのある、冷たさ。




「本当に、ごめんなさい。
これで最後にしますから……」


もう泣きません。

ぜったいです。



だから今だけ、許してください。


あたしは薄い長袖の先を、涙で濡らす。
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