かんのれあ
堪えきれなくなった涙を見られたくなくて、

あたしは急いでそこから出た。




河野さんは、どんな顔をしていただろう。




エレベーターに乗り込むと、

声を出して、堪えていた涙を全て流し切る。




この扉が開くまで泣いたら、

俯くのをやめて、前を見よう。




エレベーターのランプが1階を知らせると、

あたしは深呼吸をし、口の端を引き締める。



開く扉の隙間には、

眩暈を覚えるほどの、眩しい春の日差し。
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