かんのれあ
「で、かんのさんの新刊の実売部数はまだ発売されたばっかだし、絶対値としては実はそんな悪くないんだけどー、」


電話越しで言ってた事と、違う気がする。


しかし、さっきの河野さんの姿が何よりも全てを物語っていたので、

ハッキリ言って山崎さんの話は、もうどうでも良かった。


紙を見ながら、片手でパシパシ叩く山崎さんの目の前を横切り、あたしは早足で編集部の外へ向かう。



「ちょっ、かんのさん!?あのー!まだ話途中なんですけどー!!」


その後も、背後から「もしもーし!」なんて声が聞こえたけど、

あたしの足は、速度を落とす事を知らなかった。


だって、あの場所にいるだけで、息をするのも苦しかったから。
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