彼女は悪魔

黒い翼は元の姿に戻り、

白い翼を睨んでいた。

｢天からの使いがこんなところに来るなんて
おかしいと思っていたが…｣

そう言うと、

白い翼がクスクスと笑い出した。

｢おかしいなら笑えよ｡
俺みたいにさ｡｣

白い翼だった者の

金の髪や白い服が黒に染まりだす｡

｢かわいそーだよね｡
あの子達｡｣

｢これ以上何か言うなら殺すぞ。｣

｢ハッ
やれるもんならやってみな｣

黒い翼に負けないくらい殺気のこもった目で睨みかえした

｢まあ､今のお前にそんな権限無いけど｡｣

｢失せろ。｣

白い翼は面白くなさそうな顔をしたが､急にニヤリと笑った。

｢…またいつか会えるのを楽しみにしていますよ
『先輩』｣

白い翼の嘲笑は

雨の中に溶けるように消え


黒い翼は小さくため息をついた｡

顔にへばり付く濡れた髪をかきあげ､彼女の方を向いた。




ザブッザブッ

狂ったように水をたたき続ける彼女の腕を、優しくつかむ。

｢離せ｣

声や言葉はいつもと変わらない｡

でも、腕の先の手の平は、強く握りしめられていた｡

彼女の頬を黒い髪からの黒い雫とともに涙がつたう。

黒い翼は、泣いている彼女が嫌いな理由が分かった。


その時――


この地を離れることを


心に決めた