彼女は悪魔

こつ、こつ、こつ

静まりだした住宅街に響く足音

トットットットッ……

緊張した青空の中で響く心音。

威圧感のある足音を響かせているのは

青空の少し後ろを歩くあの少女。

「あのぉ…」

沈黙に耐え切れなくなり、
青空が立ち止まった。

「なんだ。」

少女は青空の前に来て立ち止まり、顔だけ向けた。

計算されたように美しい顔立ちや、

周りに漂う不思議な空気で

青空の頭の中は真っ白になってしまった。

「おい。なんなんだ。」

「いや、えっとごめんなさい。

…さっき、契約?をするときに別の人の声が聞こえて、

他に誰かいるのかなあっと…思いましてー…」

少女は青空の質問が終わる前に歩きだした。

「気にするな。」

返ってきた言葉は

一つ一つの音を区切って放り投げたようだった。


「ひでーな、即答かよ。」


声が聞こえたのは少女の背中。


少女の背中の黒い翼がばらりと崩れ、

舞い踊る黒い羽の中に、黒い服の青年が現れた。

その青年がくるりと振り向き、ニコッと笑う。

「よろしくな!」

青空は固まったまま、瞬きだけを返した。

少女が鋭い目つきで青年を睨んだ。



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