彼女は悪魔
「話し聞けよバカ。

見えてないんだよ、俺の姿が。

ないものをどう説明する?

できねーだろ。どうにかしてごまかせ。」

そういって手が離れたとたん、

「だから、きょっぅ…」

青空はないものを説明する気でいた。

そのため、一言も言う前に口をふさがれてしまった。

「青空…?」

青年の姿が見えない優姫には、

青空が一人で暴れているようにしか見えなかった。

青年は険しい表情で青空を見つめる優姫を見て、

ため息をついた。

「気にしなくていいよ。何でもないから。」

青空に聞こえたのは自分の声。

青空は動きをぴたりと止めた。

「にしては、なんか…すっごい変よ。」

「今日の塾いつもより長かったから、ちょっと疲れただけ。」

「…ならいいけど。」

まだ腑に落ちない様子だったが、

口ではそう言って家の中へ入っていった。

青年は閉まろうとするドアを左手で押さえ、

青空の口から手をどけた。

青空は青年を見上げた。

「普通の人間は悪魔とか信じてないんだからさあ…」

青年はため息混じりにぼそぼそ言いながら、

青空のベッドに腰をおろした。

「は……」

青空はまた口をあんぐりとあけた。
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