彼女は悪魔
「うそ…そんな…っ」

「行くぞ」

さっきより強く引っ張られた腕には従わず、

青空は立ち止まったまま動こうとしなかった。

「私のせいで…」

青空は意識が飛ぶ寸前だった。

「お前のせいじゃない。」

車が止まっては人が出てきて、口々に何か言っている。


「…死んでない。少し傷がついただけだ。気にしなくていい。」

「よくないよ…!」

パッと少女のほうを向くと、

彼女は怒ったような顔をしていた。

「ここにずっといてどうする?」

「それは……」

言葉につまる青空。

「謝るか?私のせいで怪我人がでてしまいましたって。」

「……」

「お前が今、ここに残ることのほうが危険なんだ。」

青空は横目で車の方を見た。

どんどん人が集まってきている。


もし、今、何かここで起きたら――


考えなくても分かる。

ケガ程度ではすまない。

「…分かった。行く。」

青空が答えると、少女はすぐ歩きだした。

青空は不安な表情のまま、あちこちに目をやった。

遠くからの救急車の音に背を向け、

先を歩く少女を追いかけた。
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