彼女は悪魔
青空より先を少女が歩き、

少女より後ろを青空がとぼとぼと歩いていた。



「ドロボー!」


女性の叫び声。

青空は立ち止まり、少女は一歩後ろに下がった。

「…だめ」

そう言った青空は少女のそばに寄って、

彼女の左手をつかんだ。

少女は青空のほうを向いて、だるそうに言った。

「離せ。今から来るものに対応できない。」

「怪我させたらだめ。そんなの…私を助けるとかじゃない。」

「お前そんなっ…」

その時、少女の真後ろに黒い影が出てきた。


「どけ!!邪魔だ!」


三十代半ばくらいの男が息をきらして叫んだ。

青空が動くのよりも、男が動くのよりも速く、

少女の右手が男の腕をつかんだ。

少女は男の腕をひじが曲がる方向とは逆の方向にひねった。


ポクッ


嫌な音がしたかと思うと、少女が男の腹を殴った。

ドサアッ

男が倒れこんだ。

「外傷は、ない。」

これでいいだろ、というように青空の方を振り返った。



すべての動作を止めることも出来ずに見ていた青空は、


何も言わずに走りだした。
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