彼女は悪魔

キーン ガシャカシャ


パキッ



最後のひとつまで破片が落ちると、教室中が静まり返った。


「うそっやばくない?」

「青空にかかったよ、たぶん」

小さなざわめきの後、教室中の人が立ち上がり、

硝子のない窓に集まった。

「青空ぁ…?」

真知がか細い声で青空を呼んだ。

「ごめん…」

「え?」


硝子が不自然に青空をよけていて、

そこに立つ彼女は申し訳なさそうにうつむいていた。


「だって、私のせいで

誰かが犠牲になるのは嫌だったから…」

そう言って顔を上げる。

「青空、ちょっと…大丈夫?」

クラスの女子が青空の隣に立って話しかけた。

青空は応えず、

誰もいない目の前を見ながら話しつづけた。

「そんなこと言ったって……

あ…何そのケガ!

『いい』じゃないよ…!

やっぱり私が……」


そこまで言ったところで青空の体中から力が抜けた。

青空の身体は一度不自然に止まり、

硝子の破片がないところにゆっくり倒れた。


青空のクラスや他のクラスからきた生徒、

騒ぎを聞きつけた教師は呆然と立ち尽くしていた。


少し経ってから

「は、運ぶぞ。保健室に…」

人だかりはぱらぱらと解けていった。
< 34 / 73 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop