彼女は悪魔
彼が、険しい表情で一歩踏み出すと、

彼女は後ずさった。

「何だよ…」

「動くな。」

彼女の腕をつかんで引き寄せ、コートに手をかけた。

とサッ


コートが落ちた。

彼女の後ろ、青空の前にきて、

すっと指を振り下ろす。


びり、

服を破いた。

「ああっ!ちょっと何を…」

一部始終、ぽかんと眺めていた青空が、

二人の間に割って入った。

「何だよ、これは。」

「…見たら分かるだろ。」

「何があった?」

わけが分からない青空はゆっくりと振り返った。

「っ……」


少女の背中はたくさんの切り傷でおおわれていた。

「たいしたことない」

コートを拾おうとした彼女の頭に、

彼が手をのばした。

彼女の身体から力が抜け、

重力に引かれるまま、ドサリと倒れた。


「青空、何があったんだ?」

彼は、ため息混じりに尋ねながらベットに腰掛けた。

青空は俯せに倒れた彼女の体を

仰向けになおし、困った顔をする。

「覚えてないんです。

学校行って、教室行こうとして、

そしたら急に保健室なんです。

ほんとに急に…」


「手、かして。たぶんコイツが記憶いじってる。」


青空は腕の震えを抑えながら、彼のほうへのばした。

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