彼女は悪魔
青空の腕をそっとつかんだまま、

しばらく目を伏せていた。



「分かった。もういい。」


深い、ため息をついた。

「あの…傷は……」

「ん?…ああ。治さないとな。

目茶苦茶だし、下手くそだし、つながりかけだし。」

彼女の体を起こして、手当てを始めた。

皮膚が生き物のように近づきあい、治っていく。



「青空?」

「……」

青空は正座のように足をたたみ、

下を向いたまま、ぴたりと止まっていた。

「自分のせいでーとか思ってんの?」

「だって、そうじゃないですか…!

私が言うこと聞いてれば、こんなっ…」

傷がすべてとじると、

破いた服の繊維を組合せ始めた。

「この傷、本当はもっと深かったんだ。」

青空の表情はいっそう暗くなった。

「ちょっと考えてみな。

硝子って割れたらどうなる?」

「どうなるって……」

「今までに窓ガラスが割れたの見たことないか?」

ゆっくり顔をあげ、答えた。

「破片は落ちるだけ…」

「だよな。こんな傷、つかない。」

「じゃ、どうしてこんなことに?」

「この話は……」

少女の体をベットの上にあげた。

「する気なかったんだけど。

聞いてたほうがいいかな。」

青空の両肩に手をおく。
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