彼女は悪魔
「昨日お前と出会う数分前、俺達はここにいた。」

『ここ』は真っ暗だった。

「慌てるなよ。これは俺の頭ん中の映像だからな。」

「なんか、すごく嫌です。

ここの雰囲気…」

首をぐるぐる回しながら辺りを見回す青空。

「ここには何千もの命の通過地点。

魔王のコレクションのな。」

「?」

「あいつはさ、暇つぶしに人殺ししてんだよ。」

「は…?」

「少し前までは、俺らみたいな奴を作るのに

はまってたんだけど、

ちょっと色々あって、やめてさ。

それからはずっと、人の殺し方

いじって遊ぶようになっちゃって。」

子供に呆れる母親のような口ぶり。

青空はまた、口を開けて固まる。

「本当はお前死ぬ予定なかったんだけど、

魔王は青空みたいな奴嫌いでさ。」

「私みたい…?」

「まわりから好かれてるお人よしとか。」

「話し、だいぶ逸れてません?」

「いいや。

魔王が殺そうとしてた青空を助けたっていうのは、

いいことだと思うか?」

「ダメなんですか?」

「悪いに決まってんじゃん。

最高権力者の遊びの邪魔してんだから。

俺は気づかれないように、

ここに俺らの偽物おいたりしてたんだけど…」

「けど?」

「バレちゃった。」

「『ちゃった』じゃないですよ!

やばいんじゃないんですか?」

「今のところは、むこうも様子見てるみたいだし、

ちょっかいだしてくるだけだと思う。」
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