彼女は悪魔
「俺が、言いたいのはさ、
お前のせいじゃないってこと…」
彼は口をつぐんだ。
なぜなら青空が、急にケタケタと笑いだしたからだ。
「何なんだよ、急に…」
「だって、そんなことのためにこんな……」
たいして面白いことでもないのに、笑いつづける青空。
彼はそんな青空の姿を、遠目に見ていた。
「どうかしましたァ?」
「いや…」
ふわっと片手を上げると、
真っ暗な『映像』がすうっと消えて、もとに戻った。
「あいつと似てんなって、思って。」
「似てないですよー
あいつってゆーのはこの子のことですよね?」
「いいや。」
「じゃ、誰ですか?」
「お前の知らない人間だよ。」
会ってすぐ、ここに来た時のように悲しい顔をする。
なんだか空気が重くなった。
「そーだっ!」
青空はわざとらしく、自分の前でぱんと手を叩いた。
「二人の名前教えてください。
ずっと名前知らないまんまじゃ、生活しづらいし。」
「名前なんてねーよ。」
「ハア?」
「必要ないし。そんなもの。」
「えー…んーじゃ、私がつけても良いですか?」
「どーぞご勝手に。そのかわり、
犬とか猫とかみたいなのはやめろよ。」
「はぁい」
青空は満面の笑顔で返事をした。