彼女は悪魔
「そういえば、この家って
いつもお前と姉ちゃんだけだよな。
親死んだ?」
優姫が昨日よりはのんびり出て行くのを見送った後、
朝食をとる青空に尋ねた。
「まあ、片方は。
お父さんは仕事です。」
青空はハムエッグがのったトーストをかじりながら答える。
「母親はいつ死んだんだ?」
かなり無神経な質問。
「9年前ですかね。
確かあの頃、小1でしたから。
がんだったらしいですよ。
なんかあんまり覚えてないんですけど。」
何故か青空は、人ごとのように答え、
テレビを眺めている。
「思い出とか無いわけ?」
「…さあ」
「どんな人だった?」
「んー…」
「じゃ、背格好とか…」
とんっ
青空はテーブルに手をついて、急に立ち上がった。
「出ましょう。時間無いんで。」
独り言のように言って、キッチンにいった。
まだ半分も手をつけてない朝食を
次から次へと三角コーナーに捨てていく。
その姿は明らかに異常だった。
何が原因なのかも明らか。
さっきまでなかった違和感が、部屋中を包みこむ。
――問題か…
翼は頬杖をつき、真っ直ぐな瞳で青空を見ていた。