彼女は悪魔
「オ、はよぉ」
青空は、一瞬固まった後、
ぎこちなく手をあげ、
つくり笑いを浮かべた。
「フフフ、おはよー」
一点の曇りもない、可愛いらしい笑顔が
挨拶とともに返ってきた。
ここの空気が妙になっているのは、
真知に伶美と翼が見えていないからである。
つまり、真知から見れば、
青空が独り言を言いながら
後ろ歩きをしていた、
という奇妙な光景であるはずなのだ。
至近距離で小さく手を振り続ける青空。
顔をしかめる翼。
何もなかったかのように佇む伶美。
「3人とも何かあったの?」
――3人?
「見えてるの…?」
「うん。
小さい頃からずっと。」
青空はア然としたまま、立ち尽くす。
「英語の宿題終わってないんだ。
先行くね。」
真知は栗色の長い髪を揺らし、
小走りで去っていった。
その後、青空が翼に質問を浴びせたのは
言うまでもない。