彼女は悪魔
バサッ
大きな黒いコウモリのもとへ
大きな黒い鳥が近づいていった。
「あれえ?
何でこんなところにいるんですかあ?」
わざとらしく驚いた顔をする。
「とぼけんな。
どうせ偵察だろ。」
「何で偵察なんです?」
ニヤニヤしながら尋ねる。
「お前だろ。
寿命のガキ
青空のせいにして殺したのは。」
「じゅみょう?
そんなこと、
優等生じゃない僕には分からないなあ。」
「また……
あいつが命令したのか?」
ゆるみっぱなしの口元がきゅっと締まり
翼や伶美と同じ真っ黒な瞳が鋭く光る。
「あの方を裏切ったやつが
あいつなんて呼ぶんじゃねえ。」
「……」
返す言葉が見つからない翼を見て、さっきの調子に戻った。
「あんたがやったことよりはだぁいぶ軽いと思うけど?」
翼にゆっくり近づく。
「青空って子、
今頃…罪悪感に溺れて泣いてんじゃない?」
翼の周りをぐるりと回り、
翼の前にきて、声と顔を青空のものに変える。
「私のせいでっ私のせいで…って」
ゴォッ
翼から離れながら、左腕をつかむ。
「…っぶねぇ〜
腕なくなるとこだった。」
翼の瞳には、ここへ来るまではあった
激しい怒りが灯っている。
「ハア、あんたさ、ここに何しに来たわけ?
殺りに来たのかと思ったら、
事実言って偉そうにするし、
急にキレるし、わけわかんね。」
「…これ以上、青空たちには関わらないでほしい。
あいつが恨みあんのは俺だけだろ。
俺だけなら……」
「何言ってんだよ、つまんねー
失敗作のお前の周り傷つくと
お前も苦しむことぐらいわかってるに
決まってんじゃねーか」
呆れている声だけを残して
その姿を消した。
「俺もわけわかんねーよ……」
誰に聞かれるわけでもない心音を呟き、
眩しすぎる午後の太陽を見上げた。