彼女は悪魔
彼女の姿が見えなくなると、白い翼が不安そうに尋ねた。

「またここに来るのですよね?」

「うん。」

いつでも「嬉しい」という感情でいっぱいの少女が、

ぼんやりと呟いたのは初めてだった。

「どうかしましたか?」

「さっきね、やっとあの子の声が聞こえたの。」

「声?」

「心の声。もっとちゃんと、あの子の声が聞きたい。」

「そうですか。」

白い翼の一言は、だから何、
そうつけ加えてもいいくらい
どうでもいいと言っていた。


だが、少女はそんなことにも気づかず、彼女のことだけを考えていた。

白い翼の企みにも、この後自分に降りかかる裁きにも気づかず、


ただ――


彼女のことだけを思っていた









辺りが静まり返り、少女の姿が見えなくなった時――
少女の見えなくなった方向を見つめ続ける彼女に、

黒い翼が声をかけた

「あいつ、また来るぞ。」

言われずとも分かっていたその一言に、

仕方ないだろう

と言いたかった。

「…決めるのはお前だ。」

黒い翼が思わず呟いた一言に、

『コワイ』

と泣き出したかった。
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