彼女は悪魔
ふと顔をあげた青空は

また、伶美と目が合った。


「あのさ…ちょっと…」


何を言う間もなくすぐ返ってきた「なんだ?」。



「うーんとね、あんまり見ないで?」

「は?」

「いや、えっと…

いくら女の子どうしでもさ、

そんな、ずーっと、

瞬きもしないで見られるのはさ、

恥ずかしーかなって…」




「……?」

伶美の頭が数ミリほど左に傾く。

「うーん、わかんないかあ…

ってゆーかさ、

もー少し女の子っぽくしよーよ伶美」

「そんなこと、言われても俺には分からない。」

「そこだよ、それ!

俺って言うのやめよーよ。」

たいして表情が変わったわけではないが、

伶美の顔には「嫌。」とかいてある。

青空は悪戯っぽく笑った。

「ご主人サマの命令♪」










「…は……今、何て…?」


翼の問い掛けに答える言葉はなく、代わりに返ってきたのは伶美の舌打ち。


青空は隣で、キラキラした輝きまで出ている満面の笑み。



「風邪か?お前風邪ひいたのか?人間じゃないのに?」

翼は伶美の肩をつかんで、伶美の額に手を伸ばす。

「何故コイツも同じことを言う…」

伶美からまた、目に見えない苛立ちがとぶ。


「ほらあ、ダメだってばー」

伶美は不満げに、青空をじとっと睨んだ。

青空にはもう、「睨む攻撃!!」は通じないらしい。

仕方ない、というような小さなため息のあと



半分ふざけて、半分本気の翼の手をきゅっとつかみ

ちょっと首をかしげて上目遣い



そして、かわいらしい声で


「どうして、おんなじこと聞くの?」



翼はピタリと一時停止。
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