彼女は悪魔

青空は苦い顔をしてとりあえず立った。

黒板に着くまでの間、教室の至る所からくすくすと笑う声が聞こえた。

その理由は、青空のテストの点が40点を超さないのは数学だけであるからだ。

白いチョークを右手に持ち、問題を眺める。



青空は何度か目をやっていた教科書の映像を頭の中で再生しながら

ゆっくりと数字をかいては暗算に長い時間をかけていた。



「37だ。」

「はい?」

突然の声に振り向くと、さっきと同じポーズの伶美が見ていた。

「計算間違ってる。」

「えー?どこがあ?」

独り言にしては大きすぎる声にほんの少し教室がざわつく。

先生は日誌の方を向いていて気づいていない。

「そこ書いたら次、上。どうやったらそんなに間違えるんだ。」

「んー…」

不機嫌な空気を出しながら指示を出す伶美。

渋い顔をしながら書きなおす青空。





「先生、書いたよ。」

生徒に問題を出しておきながら物思いにふけっていた横顔に驚きの表情が浮かぶ。



――いつもは黒板の前で立ち尽くすだけの天宮が笑って……



先生の目が青空の字をなぞる。

「あってる…珍しいな。」

青空はキラキラしながら席に戻った。

 
――天宮当てたら時間かかると思ったのに……

小さく心の中で呟き、時計の針を眺めながら言った。

「残りの時間自習でいいや。問題といてて。」

青空がシャーペンで伶美の足をつついた。

「なんだ。」

ニコニコしている青空がノートを指す。

そこ書かれていたのは「ありがとー」

伶美は何も言わずにどこともなく視線を離した。






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