彼女は悪魔

口を結んで、目がグラグラ揺らして、

悲しみの表情と悲しみの雫を目に浮かべ、


「……私の…っせいで…」


青空の真新しい記憶の傷から血がにじむ。


憎悪と哀れみの表情で青空を見つめる翼。


「ふざけんな。」

「…は?」



伶美が立ち上がり、どすどすと足音をたて青空に近寄る。

涙に濡れた両腕をつかみ、叫ぶように…いや、叫んだ。

「俺は!お前を死なせたくなかった!」



目を見開く翼。

眉をさげる青空。


「しゃべるな!泣くな!生きてろ!…わかったか?!」


反射的に青空の首がストンとおりる。

「わかったな!?」

「……ぷっ、」

声をあげて笑い出した。


困惑が伶美と翼を包む。


「あはははは!フフごめっ、ふっあははは!」

今度は笑い泣きといったふうに涙を流し、笑い続ける。


苛立ちを浮かばせ始めた伶美の後ろでは翼がにやけはじめた。



「はあー、わぁー、ふふふごめんっごめんね?」

青空は涙のあとを頬に残しているのを感じさせない笑顔で、不機嫌な伶美を見上げた。



「……なんだ。」


「だって…ふふふ急にあんなに必死なんだもん。

びっくりするよ。」


半笑いでそう告げた。
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