彼女は悪魔
7.ひと時の真っ白
変わらない景色。

日が昇って間もない空。

走ってるおじさん。


「はよーざいまー」

「はい、おはよう!」


変わらない二言。


変わるのは天気と気温。

朝の空気もひんやりしていて少し肌寒い。

いつもと同じ歩調、歩幅で歩く。


ぼんやりと首を動かすとうつる、やっぱりいつもと同じ風景。



  
違うことといえば…



景色のみの通学路に二つの真っ黒。

右に笑顔。左に無表情。



右を見て、左を見てにまあっと笑おうと…



ズサアァァァァぁッ


派手にこけた。



「…ったあ〜〜」

  
「おまえなあ…」

そう言ったのは翼で、のびる手は伶美。

「あは。ありが…」

「へらへらしたら殺す。」

上がりかけた口角は、しゅっと元に戻った。

「ひどいなぁー」

立たせられた青空は行く道に向き直る。

「っ?!」


いつのまにか目と鼻の先にいたのは、

今日は二つ結びのますます幼い真知。


「おはよ。」

ニコッ 効果音がつきそうなくらいの無邪気。

「…ぉはよ」

「すごいねえ。二人って触れるんだあ。」

「え?…あーうん。」

薄くかすった右腕をさすりながら苦笑いする。

「フフフ、ばんそーこー」

いつから持っていたのか、

キャラクター柄の絆創膏をそこに貼った。

そしてぴったりとくっつき、

「行こー」

返事も聞かずに青空を引っ張っていく。

少ししかたなさげにうなずき続ける青空と

一方的に話し続ける真知。

そのすぐ後ろを歩く二人。

伶美がぽそりと呟いた。

「人間は疲れるな。すぐに何かが起こる。」

ほんの少し悲しげな横顔。

それを横目でちらりと見た彼は明るい調子で、

「こんなもんだろー俺らがふつーじゃねえのー」

「俺ら?」

止まる足。睨むように彼をとらえる黒い瞳。

「お前と一緒にすんな。」

「え」

瞬き、そして、

消えた姿。

何かに腹をたてた様子の伶美は、お得意の逃げるを使ったらしい。
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