彼女は悪魔
「ん〜」
唸りながら顔をあげると、青空と目が合った。
「何か…」
「なんとかするから気にすんなー」
言いながら、青空の頭をぐいっと前に戻す。
あの場から逃げた伶美はというと…
何故か…
タコ焼き屋の前にいた。
正確には、
屋台チックなタコ焼き屋の、
右側に置かれた、つぶらな瞳の
口をすぼめてねじりはちまきをした、
真っ赤な
血管の浮き出たタコのオキモノの前にいた。
何が楽しくてこんなにグロテスクなモノを店の真ん前においてんだあ!
話が進まないがゆえにうだうだしている作者ならきっとこう叫んでいる。
周りの人間に彼女の姿が見えていたら、
確実に変な子認定されるだろう。
グロいタコの前に立つ伶美は、すっとその場にしゃがみこむ。
「おまえ、何でこんなところにいるんだ。」
もちろん、返事はない。
「もう一度聞く。何故お前がここにいる。」
返事があるはずがない。
むすっとした顔をする伶美は、膝を抱えた。
幼い少女のとるようなかっこうだが、
黒い髪の間からのぞく瞳はギラギラと光りながら
無機質なつぶらな瞳を睨みつける。