【短編】優しさなんていらないの
Haru-side
委員会が終わって昇降口で待っていると、愛しい姿が目に止まった。
背が低くて、童顔で。
すごく可愛い柚未。
順調だって思ってた。
すべてが……。
でも。
俺に抱きついてきた柚未は、泣いていた。
「春……」
「ん?」
「……優しさなんていらないの」
「え?」
突然の言葉に俺は声が掠れた。
「あたし……もっと確信がほしいの!春にはあたしだけなんだって確信が!」
確信……。
そんなの……。
「俺には……柚未だけだよ?」
俺にはホントに柚未だけなんだ。
柚未さえいてくれればいいんだ。
だから、柚未を抱き寄せようとした。
でもそれは柚未の手によって阻止された。
「違う!!」
涙が溜まった柚未の瞳が俺を見上げる。
「春は誰にでも優しくて……!!それが嫌なの!!」
誰にでも優しい……?
俺が?
柚未は……。
それが嫌だったの?
頭がこんがらがった。
どうしたらいいのか、分からなくて……。
俺は、走り去る柚未を追いかける事ができなかった。