【短編】優しさなんていらないの



梨奈の問いかけにあたしは涙目で。


「入ってないのー」


すると梨奈は呆れた顔をした。
その時だった。


「あの」


「え?」


後ろから声をかけられて振り返ると、優しく微笑んでいる男の人が立っていた。
黒い髪はツヤツヤしてて。
天使の輪が見える。
優しく微笑んでいる目は線みたいで。
その顔を見ただけで癒される。


はっきり言って……格好いい。
あ、青のネクタイだ。
って事は2年生かー。


あたしの今度から通う高校では、学年ごとにネクタイの色が決まっている。
赤は1年。
青は2年。
緑が3年。


つまりあたしは、赤。って訳。


あたしを見下ろしている先輩であるその人はフッと笑った。
あたしは少し戸惑いながらも首を傾げた。


「何か?」


するとその人はフッとまた笑って何かを差し出してきた。
それは、クマのキーホルダーと鍵。


「あ」


「君のでしょ?」


そう言ってあたしに差し出した。
それを受け取ってあたしは顔をパァッと明るくした。


「ありがとうございます!」


「うん。気をつけてね」


そう言って微笑むとその人は去って行った。


はっきり言ってあたし、一目惚れだった。
高校のしかも先輩っていうので憧れ抱いて、優しい春を好きになった。



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