【短編】優しさなんていらないの
するとあたしの視線に気付いた春が第2ボタンを指差した。
そしてニコッと笑うと、春は言った。
「……欲しい?」
「えっ……」
目を見開くと、春はフッと笑った。
「欲しいなら貰って?」
「う……」
顔が赤くなる。
貰えるのは嬉しいけど、恥ずかしい。
すると春はあたしの耳元で囁く。
「……柚未が取って?」
そう言われて、あたしは春の第2ボタンに手を伸ばす。
ゆっくりと……ボタンに触れる。
……手が震える。
緊張しちゃって。
近くに、こんなに近くに春がいるから。
ようやく外れたボタンを両手で持つと、いきなり春に抱きしめられた。
「……ちょっ、春。誰か見てるよ!」
慌てて離れようとするけど、それは無駄な抵抗。
また春に抱き寄せられた。
「みんな自分の事ばっかで見てないよ」
そう言って春はあたしの唇にキスをする。
触れるだけだけど、チュッて音が鳴って顔が熱くなる。
「もぉ!!」
赤くなった顔で春を睨むと、春は微笑む。
「高校卒業しても……柚未を離す気ないけど、いい?」
顔を覗き込んで微笑む春。
そんなのズルい……。
そんなの、うん。しか言えないよ。
「うん。離さないで……ください」