【短編】優しさなんていらないの
伝えられたらこんなに悩まないよ。
言えないから悩んでるんじゃん。
ウザい女だって思われない?
きっと優しい春に、“他の子に優しくしないで”なんて言ったらきっと困らせる。
その事で悩んでるって言ったらきっと春は、困っちゃうもん。
悩んじゃうもん。
すると梨奈はあたしの心を読んだように言った。
「ま、言えない気持ちはあたしにも分かるよ」
うぅ……。
「梨奈ぁ~……」
あたしは涙目になりながら梨奈に抱きついた。
梨奈は1番の理解者だぁ。
あたし、いい友達持ったなぁ。
「梨奈大好きだよー」
「あー、はいはい」
あたしの抱擁に、梨奈は笑いながらあたしの頭を撫でてくれる。
すると、そんな青春の1ページ的な事をしていたあたし達に、冷たい声がかかった。
「お前等……朝から暑苦しいんだよ」
その声に顔を上げると、
出た!!!
悪魔野郎!!!!
あたしはその声の主を睨んだ。
そいつはあたしと同じクラスの男子。
亘孝祐。
すぐあたしを馬鹿にして、貶してくる苛めっ子。
そのくせ他の女子にはいい顔して……。
結構モテる。
……何でこんな奴がモテるのよ。
「亘!邪魔しないでよ!」
そう言ってあたしは亘を睨みながら背中を叩いた。
すると亘はあたしを見下ろして口を開いた。
「柚未……あ、そこにいたのか。小さくて見えなかった」
っく……。
ムカつく……。
偉そうな顔しやがって。
「フン!ばーか」