【短編】優しさなんていらないの
はっきり言って、亘の口から春の事を聞かれるよ思ってなかったから、あたしはキョトンとした。
「……順調だけど?」
「ふーん」
って何だよ。
その薄い反応は。
聞いてきたのはそっちじゃん。
なのに何で、そんな興味なさそうな返事するのよ。
訳の分からない亘にイラッとしていると、亘はあたしの前の席に腰掛けた。
そして意地悪な笑みを浮かべてあたしを見下ろす。
「……嘘でしょ?」
「え?」
「ホントは……不安なんでしょ?」
何で……。
「別にっ……」
亘の目と目が合う。
何だか心の中まで見透かされてるような気がして、あたしはすかさず視線を逸らした。
すると亘は外を眺めながら言った。
「お前分かりやすいから……顔見てるだけで分かる」
「え?」
「先輩が優しすぎて不満なんだろ?」
何で……。
何で分かるの?
何でこいつに分かって、春は気付かないの?
それが何だか悔しかった。
あたしは視線を逸らして、席を立った。
「もし……そうだとしてもあんたには関係ないでしょ?」
教室の異様な雰囲気に堪えられなくなった。
まだ春からのメールは着てないけど……。
あたしは教室から出ようとした。