王子様なんてキョーミナイシ
この中庭には、私しか居なかった筈。
この、中庭にバイクを突っ込んで来た非常識さんは、頭が狂ってるんでしょうか。
「フン。次は無視かよ?可愛げねぇ女。」
どこかで聞いたことのある声だった。
煩いから、一発注意してやろうと振り向いた私は、多分、鳩が豆鉄砲をくらったような顔だった気がする。
「あ…荒木!!」
何とそこには、紛れもない、荒木が居た。
「は?『荒木』じゃねーだろ」
「は?」
何こいつ。ついに頭いかれた?
「『荒木様』だろ?」
…。
―ブチ
聞き慣れない、また変な音がした。
「ナルシちゃんは、早くお家に帰って鏡でも見てたら〜?そういう性格は、必ず誰かに嫌われるからね。」
そう吐き捨てて、私は中庭を後にした。
中庭には、私の忘れてしまった、愛読書『大好きなあなたに伝えたい』と、荒木だけが静かに取り残されていた。