元彼の末路
 けれども、異変は突然起きた――。

 学校の帰り、池のある公園でデートをするのが日課になっていたのだが、何回目かのデートの時、彼の携帯電話が鳴った。友達か誰かだろうと思っていたのだけれど、彼の話しっぷりは、まるで恋人に話すような話し方だ。

「何だよ、すねるなよ。大丈夫だから。うん、俺はちゃんと帰るし」


 もしかして、他に付き合っている女性でもいるのかしら。もしそうなら、私のいる前で堂々としすぎなのではないだろうか。

 凛花は不安になりながら、彼の横顔を見つめていた。


「分かってるよ。すぐ帰るから待ってろよ。な?」


 すぐ帰るって……彼は確か父親が亡くなってから、母親とお兄さんと三人暮らしのはず。電話の相手は誰だろう。家に帰らず、何処か別の女性の所へ行くつもりなのだろうか。

 凛花の不安が最高潮に達そうとしていた時、直道は電話を切った。


「ごめんな凛花。俺そろそろ帰らないと」


「えっ? 家に帰らないの?」


「家に帰るけど、何で?」


 逆に何でと訊かれたが、直道が嘘を吐いているようには見えない。きょとんとした顔をしている。電話の相手は誰だったのだろう。


「直道、電話の相手……誰?」


 凛花が恐る恐る質問すると、直道はすぐさま答えた。


「ママだよ。じゃ、俺急ぐから、また明日な」


 直道は凛花の頭を撫でると、スタスタと公園を出て行った。
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