濡れない紫陽花
遊びじゃなくて。
おもちゃじゃなくて。
それならなおさら――
(なんで、僕なの)
疑えば、きりがなかった。
困惑で使い物にならない頭が、何かを考えようとして、だけど何も考えられなくて。
ぐるぐるぐるぐる。
冷静な判断なんて、見失った。
目の前にいる、頬の赤い彼女だけが真実で――
僕の疑った、遊びのすきな彼女はニセモノで――
(信じて、いいの?)
「僕で、いいなら」
そうして、見たこともないような美しい君と――
お互いに一目惚れだなんて、嘘みたいに綺麗な恋に落ちた。