濡れない紫陽花
 
誰より美雨を知った気でいた。

誰にも美雨を教えたくなかった。



―「1組のカップル、仲いいよねー」

―「学年1って噂だよ」

―「しかも美形カップルだし」

―「でも、美月さんの綺麗さは反則だよね」




美雨の美しさしか知らない、噂好きの生徒を鼻で笑った。

けれど、美しさ意外、誰にも教える気は無かった。




あの体温を。

あの頬の赤みを。

教えるわけにはいかなかった。





溢れ出る独占欲がいつしか僕を取り囲んでいる。

美雨は、そんな事も知らずに、いつもの笑顔で僕の手を求める。



時々、僕の部屋でDVDを見たりして。

何故か、手を繋いで見ることが約束事だった。

ホラーに弱いくせに見たがりで

この2月で震える君を何度抱いただろう。





もう、5月が終わろうとしている。
 
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