濡れない紫陽花
1. 移り香
春が、春が、咲いている。
4月。
高2になった僕は、春休み明けで久しぶりになる学校へ向かっていた。
道先では、そこらじゅうに桜が咲いている。
今日は風が強い。
風が吹くたび、雨のように、桜の花が降ってきた。
ひらひら舞って、ひらひら降って。
高校の正門につく頃には、すっかり桜の雨を浴びた気分だった。
青いブレザーに、花びらが何枚かついている。
それを払っていると、去年同じクラスだった男子や女子が、僕の周りに集まってきた。
―「葉季、遅かったじゃん!」
―「ホントだよ。もうクラス替え発表しちゃったよ」
―「私、葉季と違うクラスなの」
―「俺も。やっぱみんな結構バラバラでさ」
ウチの高校は共学のマンモス高で、未だに同じ学年全員の顔は全然わからない。
クラス替えをしたら、クラス中がバラバラになることは、なんとなく皆が予想していた事だ。