濡れない紫陽花
 
やっとの思いで授業が終わる。


「帰ろう」


美雨は具合が悪いのに、早く返してあげたくて。

美雨の手をひき、駆け出したい気分だった。




手を繋いで、僕の傘をさす。

美雨の傘は広げずに、2人で1つの傘に入った。




「ねぇ、葉」

「何?」


「私、これからも怠そうにしてる日がいっぱいあるかもしれないけど…ちょっと梅雨で、気が滅入ってるだけだから、あんまり心配しないでね」


「心配するよ」


「いいの。ただでさえ気分がじとじとしやすいのに、葉まで私の心配で元気なかったら…私悲しいし」



そんな事言ったって、無理に決まってるじゃないか。

すき、なんだから。

心配するさ。



(それを美雨が望まないなんて。)





「わかった。だけど、本当に苦しい時はちゃんと甘えてくれ」



ちゃんと、美雨の望むことをしてあげたかった。

だから、心配する想いを押し殺してそう告げた。



(僕は正しい答えを選べてる?)


誰も、答えてくれない。

 
< 21 / 49 >

この作品をシェア

pagetop