濡れない紫陽花
やっとの思いで授業が終わる。
「帰ろう」
美雨は具合が悪いのに、早く返してあげたくて。
美雨の手をひき、駆け出したい気分だった。
手を繋いで、僕の傘をさす。
美雨の傘は広げずに、2人で1つの傘に入った。
「ねぇ、葉」
「何?」
「私、これからも怠そうにしてる日がいっぱいあるかもしれないけど…ちょっと梅雨で、気が滅入ってるだけだから、あんまり心配しないでね」
「心配するよ」
「いいの。ただでさえ気分がじとじとしやすいのに、葉まで私の心配で元気なかったら…私悲しいし」
そんな事言ったって、無理に決まってるじゃないか。
すき、なんだから。
心配するさ。
(それを美雨が望まないなんて。)
「わかった。だけど、本当に苦しい時はちゃんと甘えてくれ」
ちゃんと、美雨の望むことをしてあげたかった。
だから、心配する想いを押し殺してそう告げた。
(僕は正しい答えを選べてる?)
誰も、答えてくれない。