濡れない紫陽花
4. 強い雨
あの日から毎日、美雨は学校へは出てくるものの、いつも体調悪そうにしていた。
心配な気持ちを殺し、僕は美雨に明るく勤め、毎日紫陽花の咲く帰り道の前でキスをした。
愛しているから無理をする。
愛しているからキスをする。
混乱するようで、ただ同じことを繰り返す毎日は暗い。
付き合い始めた頃は、同じ繰り返しの日々でも、あんなに楽しかったのに。
こんな暗い日々には、この梅雨の雨がよく似合う。
きっとこの世で美しいものは、美雨とあの紫陽花の花だけだ。
後はみな、この梅雨の雨に包まれた、暗がり。
授業中、いつもそんな事を考える。
僕の気もすっかり滅入っていた。
きっと、終焉が近い。
そう、昇った日がキラキラと輝いて――
傾く日差しまで浴びたなら、あとは沈んでゆくように。
(どうせ、傾いているんだろう?)
また、誰も答えない。